目次
政府の保育士雇用改善策の考え方
政府は次のような取り組みを行っています。
- 民間保育所で働く保育士の給与を平均5%改善
- 職場復帰のための研修を開催し、保育士としての復帰をサポート
過去の取り組みとしては
- 幼稚園教諭免許取得者に係る保育士資格取得特例の活用で保育士を増加
- 認可外保育施設に勤務している保育士資格を所持していない方に保育士養成施設の受講費を支援
- 保育士養成施設への入学者を対象に修学資金貸付
- 就職あっせん機能向上のための研修実施
- 離職防止研修の充実
- 処遇改善
- 雇用管理者の研修
- 再就職前の実技研修
- 養成校卒業者への再就職支援
など取り組み例は多くあります。しかし感想としては現場では余り意味を感じられないものが多いのも事実です。
保育士取得者は一定数いる
保育士の国家資格取得者の数を考えれば「保育士になりたい」「保育士になろう」「子どもの力になりたい」と思っている人の数は一定数いることがわかります。
現在潜在的な保育士は68万人
2016年からは保育士国家試験は年2回になりましたし、地域限定保育士も導入されるようになりました。地域限定保育士では実技試験を設けないという話も出ています。
保育士取得者が保育士として働かない理由
出典:厚生労働省
- 激務だから
- 給与が安いから
- モンスターペアレンツの表面化
- アレルギーの個別対応など業務の多様化
- 仕事持ち帰りの常態化
- 常時人員不足による負担の多さ
- 女性社会特有の職場環境
- 保育園外からの苦情などの対応
代表的な理由は激務な上に給与が安いから。更にモンスターペアレンツなど保護者との関係が難しくなってきたり、アレルギーなど過去と比べれば対応の範囲も非常に多くなっています。昔はアレルギーの子のご飯は家庭で用意するのが一般的でしたし、預ける以上保育園の規則に習うという点でも今よりもずっと守られていて、保育がしやすい環境にありました。両親ももっとどっかりと腰を据えて預けていたという印象です。
加えて職場環境が女性社会という点も問題のひとつ。職場ごとで大きく変わりますが、女性特有の話題や態度などなじめない人も多くおり、子どもが好きだからだけでは続けられない現状があったりします。さらには男性保育士の場合、保育園としては男性だからこそできることもあり、男性保育士が欲しいといってくれる園もありますが、子どもを男性保育士に預けたくないという親がいたりすることで採用に消極的になったりと、問題は園内だけではなくなっています。
このようにまだまだ多くの問題がありますが、一般的な職種に比べれば問題が山積みです。金銭だけの問題ではないことがわかります。逆にこれらが解消されれば給与は今のままでも働く人は大勢いるでしょう。
保育士国家試験の勉強をすればわかる保育園の守備範囲の広さ
現状に対して、保育園は求められていることが相当に多くなっています。保育士といえば「子どものお世話をして、共に成長していく」というイメージがあるかもしれませんが、そんなものではありません。地域と連携をしなくてはならず、苦情窓口も設置、地域の子どもを持つ親の相談なども請け負うことになっています。園外の仕事、求められることが想像以上に多く、精神的肉体的負担になる業務が多くあります。
求められている理想と、現実が離れすぎていることも原因のひとつ
このように国や地域から求められていることと、現実に大きな開きがあり、それに対する金銭的サポートも、人員的サポートもありません。「お金は払わないけど気持ちで頑張って」といわれているような現状があります。
保育士 陽乃からみた現状改善案
構成比 | 平均年齢 | 勤続年数 | 決まって支給する現金給与額 | |
---|---|---|---|---|
男女合計 | 100% | 35.0歳 | 7.8年 | 214万2千円 |
男性 | 5.3% | 30.0歳 | 4.7年 | 231万2千円 |
女性 | 94.7% | 35.3歳 | 8.0年 | 213万3千円 |
出典:平成24年賃金構造基本統計調査
少しずつ改善されている面はありますが、モンスターペアレンツ、アレルギー対策、地域との親交、苦情対応など過去に比べて仕事や対応が拡大・増加している割には所得は増えていないというのが正直なところです。
認可保育園の料金は所得で決まることになっていますが、希望者が多い分、利用料を上げて保育士に還元、給与は据え置きで保育士数を増やして一人当たりの業務内容を減らしたり、給与をグッと上げることで満足度ややりがいを見出したりするのが現状では一番なのではと思います。
給与が3%、5%あがったところで20万の給与なら6,000円~1万円程度しかあがりません。そういうレベルの問題ではないという点に政府が気付かないものかと思っています。
保育士の就職、転職で確認するべきポイント
考え方としては現状は保育士売り手市場とも言えます。保育士求人は地区によっては2倍以上の求人倍率なので、転職サイトなどに登録しておいて条件がいいところを探し、自身の希望と合った時だけ応募してみるというのもいいのではないでしょうか。